「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展

ピアノを弾くイーダのいる室内

上野の国立西洋美術館では、9月30日(火)から「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展が開催されます。

ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)は、生前にヨーロッパで高い評価を得た、デンマークを代表する作家の一人です。没後、急速に忘れ去られましたが近年、再び脚光を浴びています。ハンマースホイの作品は17世紀オランダ絵画の強い影響を受け、フェルメールを思わせる静謐な室内表現を特徴としています。室内画の舞台は自宅であり、登場人物として妻のイーダが後姿で繰り返し描かれました。イーダの後姿は、我々を画中へと導いてくれるのですが、同時に、陰鬱な室内と彼女の背中によって、我々は「招かざる客」かのような拒絶感も覚えることとなります。しかしながら、ハンマースホイの室内画が決して居心地が悪いというわけでありません。モノトーンを基調とした静寂な絵画空間が綿密に構成されているためでしょう。まるで音のない世界に包まれているような感覚に浸れるのです。
ハンマースホイの芸術世界を日本で初めて紹介する本展では、同時期に活躍した、デンマーク室内画派とよばれるピーダ・イルステズやカール・ホルスーウの作品も合わせて紹介します。デンマーク近代美術の魅力に触れることのできる大規模な回顧展となる予定です。

ちょうど現在東京都美術館で「フェルメール展」もやっていて紹介文では名前が引かれていますが、見比べてみるのもよさそう。なおハンマースホイの絵画は松浦寿輝氏の小説『半島』の表紙にも用いられているそうです。

半島 (文春文庫)

半島 (文春文庫)